オーバーステイの外国人と結婚

結婚した外国人がオーバーステイしていた・・・。結婚したとたんに日本と外国で離ればなれになっちゃうの!?と思われるかもしれませんが、在留特別許可をとれればそのようなことはありません。お?なんだ、そんなシステムあるなら余裕じゃんと思われるかもしれませんが、在留特別許可されないこともありますので、慎重に検討が必要です。もう一つ方法として考えられるのは一旦帰国して在留資格をとるという方法です。どうするかは弊所に相談して決めたほうがいいでしょう。

在留特別許可について

在留特別許可とは法務大臣の裁量的な処分のことです。入管法第50条で定められています。

入管法第50条

法務大臣は、前条第三項の裁決に当たつて、異議の申出が理由がないと認める場合でも、当該容疑者が次の各号のいずれかに該当するときは、その者の在留を特別に許可することができる。

一 永住許可を受けているとき。

二 かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき。

三 人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留するものであるとき。

四 その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき。

2 前項の場合には、法務大臣は、法務省令で定めるところにより、在留資格及び在留期間を決定し、その他必要と認める条件を付することができる。

3 法務大臣が第一項の規定による許可(在留資格の決定を伴うものに限る。)をする場合において、当該外国人が中長期在留者となるときは、出入国在留管理庁長官は、入国審査官に、当該外国人に対し、在留カードを交付させるものとする。

4 第一項の許可は、前条第四項の規定の適用については、異議の申出が理由がある旨の裁決とみなす。

要するに、在留希望の理由や家族状況や素行、色々な事情によって判断しますよってことです。また、ありがたいことに透明性を高めるという理由で事例を公表しています。

在留特別許可された事例(配偶者が日本人)

  1. 出頭申告で発覚
    約6年間の在日期間があり、違反期間は4年。婚姻期間は約3か月で夫婦間の子もいなく妊婦ということでもない。刑事処分等もないので、日本人の配偶者等の在留資格取得でき、在留期間は1年。

  2. 出頭申告で発覚
    約23年以上の在日期間があり違反期間は約23年。婚姻期間は約10か月だが、これも日本人配偶者等の在留資格を取得でき、在留期間は1年。

  3. 警察に逮捕で発覚
    約17年以上の在日期間があり違反期間も同期間程度。婚姻期間は約5か月だが逮捕までに約12年同居しており、その信ぴょう性も認められる。未成年の子どもがおり、刑罰は懲役2年6か月に執行猶予3年の判決が出た。

在留特別許可されなかった事例

  1. 出頭申告で発覚
    約7年以上の在日期間があり、違反期間は4年弱。婚姻期間も4年弱ほどあったが在留特別許可はされなかった。

  2. 出頭申告で発覚
    約16年の在日期間があり、違反期間は16年弱。婚姻期間は約2年4か月ほどあったがこれも在留特別許可はされなかった。

  3. 出頭申告で発覚
    約13年ほど在日期間があり、違反期間は13年。婚姻期間は約5年ほどあるが在留特別許可はされなかった。

在留特別許可はしないといけない

在留特別許可はどのみち申請しなければなりません。そうしなければ常に捕まるリスクがありそれこそ強制退去させられる可能性が高くなっていきます。ビクビク日本で生活するより、しっかりと申請をして堂々と生きていくほうが家族にとってもいいでしょう。

在留特別許可がおりなかった事例はほとんどが資格の立証ができなかったというケースです。なので、しっかりと立証できるように専門家に相談し、どのようにして許可をとっていくかというアドバイスをもらいつつ申請をするようにしましょう。

在留特別許可に関するガイドライン

あまりにも問い合わせが多いのか、入国管理局は在留特別許可に関するガイドラインをだいぶ前から公開しております。 在留特別許可の許否の判断に当たっては,個々の事案ごとに,在留を希望する理由,家族状況,素行,内外の諸情勢,人道的な配慮の必要性,更には我が 国における不法滞在者に与える影響等,諸般の事情を総合的に勘案して行うこととしておるようです。

特にプラスの要素

  1. 当該外国人が,日本人の子又は特別永住者の子であること
  2. 当該外国人が,日本人又は特別永住者との間に出生した実子(嫡出子又は父 から認知を受けた非嫡出子)を扶養している場合であって,次のいずれにも該当すること
    ア 当該実子が未成年かつ未婚であること
    イ 当該外国人が当該実子の親権を現に有していること
    ウ 当該外国人が当該実子を現に本邦において相当期間同居の上,監護及び養育していること
  3. 当該外国人が,日本人又は特別永住者と婚姻が法的に成立している場合(退 去強制を免れるために,婚姻を仮装し,又は形式的な婚姻届を提出した場合を除く。)であって,次のいずれにも該当すること ア 夫婦として相当期間共同生活をし,相互に協力して扶助していること イ 夫婦の間に子がいるなど,婚姻が安定かつ成熟していること
  4. 当該外国人が,本邦の初等・中等教育機関(母国語による教育を行っている教育機関を除く。)に在学し相当期間本邦に在住している実子と同居し,当該実子を監護及び養育していること
  5. 当該外国人が,難病等により本邦での治療を必要としていること,又はこのような治療を要する親族を看護することが必要と認められる者であること

あくまでも上記は一部の判断基準となります。他にも難病で日本での治療が必要な場合なども含まれます。

まあまあ積極要素

  1. 当該外国人が,不法滞在者であることを申告するため,自ら地方入国管理官 署に出頭したこと
  2. 当該外国人が,別表第二に掲げる在留資格(注参照)で在留している者と婚 姻が法的に成立している場合であって,前記の3のア及びイに該当する こと
  3. 当該外国人が,別表第二に掲げる在留資格で在留している実子(嫡出子又は 父から認知を受けた非嫡出子)を扶養している場合であって,前記の2のアないしウのいずれにも該当すること
  4. 当該外国人が,別表第二に掲げる在留資格で在留している者の扶養を受けて いる未成年・未婚の実子であること
  5. 当該外国人が,本邦での滞在期間が長期間に及び,本邦への定着性が認めら れること
  6. その他人道的配慮を必要とするなど特別な事情があること

特にこれはマイナス要素

  1. 重大犯罪等により刑に処せられたことがあること
    <例>
    ・ 凶悪・重大犯罪により実刑に処せられたことがあること
    ・ 違法薬物及びけん銃等,いわゆる社会悪物品の密輸入
    ・売買により刑 に処せられたことがあること
  2. 出入国管理行政の根幹にかかわる違反又は反社会性の高い違反をしていること <例>
    ・ 不法就労助長罪,集団密航に係る罪,旅券等の不正受交付等の罪など により刑に処せられたことがあること
    ・ 不法・偽装滞在の助長に関する罪により刑に処せられたことがあるこ と
    ・ 自ら売春を行い,あるいは他人に売春を行わせる等,本邦の社会秩序を著しく乱す行為を行ったことがあること
    ・ 人身取引等,人権を著しく侵害する行為を行ったことがあること

まあまあマイナス要素

  1. 船舶による密航,若しくは偽造旅券等又は在留資格を偽装して不正に入国したこと
  2. 過去に退去強制手続を受けたことがあること
  3. その他の刑罰法令違反又はこれに準ずる素行不良が認められること
  4. その他在留状況に問題があること
    <例> ・ 犯罪組織の構成員であること

在留特別許可の許否判断

在留特別許可の許否判断は,上記の積極要素及び消極要素として掲げている各事項について,それぞれ個別に評価し,考慮すべき程度を勘案した上,積極要素として考慮すべき事情が明らかに消極要素として考慮すべき事情を上回る場合には,在留特別許可の方向で検討することとなる。したがって,単に,積極要素が一つ存在するからといって在留特別許可の方向で検討されるというも のではなく,また,逆に,消極要素が一つ存在するから一切在留特別許可が検 討されないというものでもない。 とされています。

許可の方向で検討するだけですので、必ずしも積極要素ばかりだといって許可される訳では無いと思っておきましょう。ただ、ガイドラインを公表している限り、かなり重要な要素ですので覚えておきましょう。

在留特別許可が下りなかった場合

在留特別許可が下りなかったら帰国しなければならず、5年~10年は日本へ入国できなくなります。つまり結婚していれば配偶者とは離ればなれになります。

そのような場合は上陸特別許可という申請がありますので、一度検討してみるのもいいでしょう。

相談しても大丈夫?

在留特別許可が必要になるという事は本来なら法に違反している状態ということです。それを法務大臣の判断で日本にいていいという「特別」な許可なわけです。なので、相談者の中にはそんな違反している状態で相談してチクらないか?という心配があるかもしれません。通報は絶対にしませんので安心してご相談ください。